ドイツでの妊娠と出産。出産までの流れと必要な情報!
- 投稿日:2024.07.14 最終更新日:2024.07.14
- ドイツ情報
この記事では、ドイツでの妊娠と出産について、そのおおまかな流れと知っておきたい情報をまとめたぞ!
著者はベルリンに10年ほど在住しており、オーストリア人の妻とともにドイツでの出産を間近に控えている。この記事では、ドイツでの出産について日本とは異なる部分にフォーカスしながら、必要な事柄をまとめてある。
妊娠から出産までの流れ
妊娠に気づいてから出産に至るまでの約9ヶ月間の流れを図で確認しよう!
ドイツで出産をする場合、検診のための婦人科、出産を行う出産病院、出産をサポートする助産婦、また、出産後に検診を行う小児科医を自分たちで探すこととなる。
なお、出産に掛かる費用の多くは保険の適用内だ。
① 妊娠を確認する
妊娠に気づいたらまずは市販の妊娠検査薬で検査をしよう。
妊娠検査薬は薬局(Apotheke)や医薬品の通販サイトなどから購入できる。
なお、妊娠検査薬は98%の確率で正しい答えが出る。
② 婦人科を受診
妊娠検査が陽性であったなら、婦人科(Frauenarzt)で診察してもらおう。
婦人科医は以下のようなウェブサイトで探すことができる。婦人科医は今後も何度か通うことになるので、自宅からできるだけ近い場所で探そう。
Doctolib
https://www.doctolib.de
診察後には、母子手帳を発行してもらえる。
その後は、31週目までは月1回、32週目からは2週間に1回のペースで妊婦検診Schwangerschaftsvorsorgeを受けることになる。なお、出産予定日を過ぎた場合は2日に1回のペースで検診を受ける。
なお、ドイツでは妊娠から出産までの段階をTrimesterという単位で分けている。1. Trimesterは最初の3ヶ月、2. Trimesterは4~6ヶ月、3. Trimesterは7~9ヶ月のことを指すぞ。
超音波検査
妊婦検診では、胎児の様子を確認するために通常では計3回、超音波検査が行われる。通常は9~12週目に1回目、19~22週目に2回目、29~32週目に3回目の検査を受ける。
1回目の超音波検査では、始めて胎児の姿を写真で確認することができる。
胎児が双子である場合はこの時点で判る。
2回目の検査では、体長の計測によって胎児の発育が正常に進んでいるかを確かめる。この検査で胎児の性別が分かることが多い。
3回目の検査でも、胎児の成長に問題がないかを確認する。また、この検査で母胎の中の胎児の姿勢が判る。
なお、ドイツでは胎児への影響を懸念して、一定の期間に受けられる超音波診断の数は定められている。
③ 助産婦を探す
婦人科を受診したら、すぐに助産婦を探し始めよう。
助産婦は、婦人科からの紹介やインターネット・新聞で探すことができる。
助産婦は出産に立ち会うだけではなく、産後から8週間、自宅まで来て母親と赤ちゃんの体調をチェックしてくれる。もちろんその他の出産について不安なことがあれば相談に乗ってもらえるはずだ。
現在ドイツでは助産婦の不足が深刻化している。新規の顧客を受け付けていない助産婦も多いので、見つけるまでに時間が掛かることを覚悟しておこう。
なお、ドイツの助産婦には、専属の病院で働くパターンと、フリーランスとして働くパターンがある。
以下が助産婦さんに受けられるおもなサービスだ。
- 妊婦の診断 Schwangerenvorsorge
- 出産準備講座 Geburtsvorbereitung
- 産褥期のケア Wochenbettbetreuung
- 出産後のリハビリ Rückbildungsgymnastik
④ 育児休業の申請
妊娠から3ヶ月ほど過ぎ安定期に入ったら、務めている会社に妊娠を報告し、育児休業の申請をしよう。
育児休業の申請は必ず口頭ではなく書類で行う。書類の形式に決まりはない。 育児休業はおそくとも休業に入る7週間前までに申請しなくてはいけない。
育児休業のルール
ドイツでは、育児休業は両親期間(Elternzeit)と呼ばれる。
育児休業は父親、母親ともに申請することが可能で、申請できる期間は最長で3年間だ。父親と母親が同じ時期に取得することもできるし、育児休業をいくつかの時期に分けて取得することも可能だ。
ドイツでスタンダードなのは、母親が12ヶ月、父親が2ヶ月を申請するパターン。実際の出産が予定日より早くなった場合や、遅くなった場合はそのタイミングに合わせて休業期間をずらすこともできる。
なお、出産予定日の6週間前から8週間後までは、母親保護(Mutterschutz)の期間であり、この期間は育児休業とは別に計算される。
⑤ 補助金の申請
ドイツでは、出産や子育てにまつわる補助金の種類が多く複雑だ。
ここではおもな3つの補助金についてのみ説明する。
母親手当と雇用主支給 Mutterschaftsgeld & Arbeitgeberzuschuss
説明 : 出産予定日の6週間前から8週間後まで、母親に対して支給される手当。
申請方法 : 加入している健康保険会社 。
支給額 : 2つを合わせて給料のほぼ100% 。
両親手当 Elterngeld
説明 : 育児休業を取得している間、通常の給料を補填するための手当て。
申請方法 : 出生後に児童福祉課(Jugendamt)にて申請。
支給額 : 給料のおおよそ65%。
子供手当て Kindergeld
説明 : 親の収入に関係なく一律でもらえる育児のための給付金。
申請方法 : 申請先は家族公庫(Familienkasse)。オンラインでも申請が可能。
支給額 : 1人目の子供は204ユーロ。
⑥ 出産病院を探す
次に出産を行う病院(Geburtsklinik)を見つけよう。
ドイツでは現在、ベビーブームと出産施設を持つ病院の減少が重なって、出産病院の不足が問題になっている。自分の希望にあう出産病院を見つけるために早めに動き出そう。
多くの病院は定期的に説明会などを行っているので、できれば夫婦そろって参加しよう。希望する病院で受け付けてもらえなかった時の事を考えて、第2希望の病院も見つけておこう。
病院以外での出産
ドイツでの出産には
- 病院での出産
- Geburtshausでの出産
- 自宅での出産
と3つの選択肢がある。
Geburtshausは助産婦が運営する出産のための施設。病院よりはリラックスしやすい雰囲気だが、手術などが必要となった時は急いで病院に移動しなくてはならない。
⑦ ベビー用品の準備
諸々の手続きが落ち着いたら、ベビー用品を揃え始めよう。
ベビー用品の購入には、様々な方法がある。
賢く節約して将来のために備えよう。
- お店で購入(ドイツではおもちゃでベビー用品が買えることが多い)
- 通信販売で購入
- ebay kleineanzeigeなどの個人売買
- ベビー用品のフリーマーケット
- レンタルサービスの利用
知り合いの中に子供を持つ人がいるならば、要らなくなったものを譲ってもらうこともできるかもしれない。
⑧ 出生届の準備
出生届の申請に必要な書類を揃えておこう。
実際の届け出は子供が産まれてから、病院が発行する証明書とともに戸籍役場(Standesamt)にて行うが、必要となる書類は早い時期に揃えておこう。日本語の書類は認定翻訳士を通じてドイツ語に翻訳してもらう必要がある。
必要となる書類は以下の通り。
- 父親の出生証明書(日本人の場合は戸籍謄本)
- 母親の出生証明書(日本人の場合は戸籍謄本)
- 婚姻証明書(結婚している場合)
ドイツの出産病院の中には、戸籍役場の役員が立ち寄る病院もある。その場合は病院内で書類の提出を済ませることができる。
パートナーと結婚していない場合
父親と母親が結婚をしていない場合、 父親は父子関係を法的に認定するために、父子テスト(Vaterschaftstest)を受ける必要がある。父子関係が認められていない場合、養育権などは持たない。
もし、パートナーと結婚していない場合は気をつけよう!
⑨ 出産準備講座
ドイツでは通常、出産の2ヶ月ほど前に助産婦のもとで出産準備講座を受ける。
講座では、陣痛が始まってから分娩までの出産の流れを確認するとともに、妊婦の心がけを習う。できれば父親も共に参加したほうがいい。
受講時間や内容は助産婦によって異なるので、助産婦に確認しよう。
費用は母親の場合は全額保険の対象となる。父親に関しては自己負担となる。
⑩ 入院前の準備
出産予定日の2週間くらい前になったら、出産病院に入院するための準備をバッグにまとめておこう。
以下が持ち物のチェックリストだ。
- マタニティパジャマ
- シャツ(前が開くもの)
- 下着
- サンダル
- タオル
- 化粧品
- 普段着
- 赤ちゃんの服
- ベビーシート
- 母子手帳
- パスポート
- 健康保険カード
- 両親の出生・戸籍証明書
- 婚姻証明書
⑪ 名前を決める
子供の名前は余裕を持って決めておこう。
ドイツではダブルネームの使用が認められている。日本とドイツ、どちらでも通じるような名前を付けるか、ダブルネームにしてドイツ風の名前と日本風の名前を組み合わせることもできる。
また、父と母の苗字が異なる場合は、子供がどちらの苗字を受け継ぐかについても話し合っておこう。
名前を決める際は、こちらの記事も参考にしてほしい。
[blogcard url=”https://doitsugo-yarouze.com/firstname-surname”]
⑫ いよいよ出産!
陣痛の間隔が一定になり、出産の兆候を感じたら出産病院に移動しよう。
出産病院が専用の移動車を用意している場合もあるが、出産病院までの移動方法については必ず事前に確認しておこう!
なお、タクシーを使う場合は乗車を断られるケースもあるとの事。
救急車は指定した病院に連れていけない可能性があるので使用できない。
帝王切開について
ドイツでは帝王切開をする人が年々増えており、現在では出産全体の3分の1にあたる子供が帝王切開により産まれている。
必要でない場合でも帝王切開を選択するケースが増えており、専門家は警告している。
PDAについて
PDAはPeriduralanästhesieの略で、日本語では硬膜外麻酔と呼ばれる。PDAは帝王切開を行う時も通常の出産の時も痛みを和らげるために用いられる。
まずは麻酔無しでの出産を試みて、予想外に痛みが強い場合はPDAを使用するというケースが多い
妊娠・出産に関するサイト
最後に妊娠や出産に関するウェブサイトを紹介しよう。
Familien portal(英語・ドイツ語など)
https://familienportal.de
ドイツの公的機関(BMFSFJ)が運営する情報サイト。
おもに育児手当などの補助金に関する情報が豊富だ。
英語に切り替えが可能。また、簡単なドイツ語(Leichte Sprache)で表示することもできる。
kidsgo(ドイツ語)
https://www.kidsgo.de
妊娠前から出産後まで、家族・子供にまつわる情報をあつかう総合情報サイト。
住んでいる地域を設定すれば、助産婦探しなど地域ごとの情報も手に入れることができる。
Eltern(ドイツ語)
https://www.eltern.de
ドイツの子育て情報雑誌「Eltern」のオンライン版。
妊婦のための記事を中心に家族にまつわる全般の情報を扱っている。