ドイツの教育制度を解説!初等から中等教育まで。

ドイツの教育制度を解説!初等から中等教育まで。

この記事では、ドイツの教育制度(基礎学校入学から中等教育終了まで)について説明する。

ドイツの教育制度は世界から見ても特殊で、10歳前後の早い段階で将来の進路を決めるなくてはならない。子供の適正にあった教育ができるというプラスの側面がある一方で、教育格差を助長して社会を不安定にするという負の側面もある。

今回はそんなドイツの教育制度を詳しく見ていこう!なお後半では日本人学校やインターナショナルスクールについてもまとめてあるぞ。

教育制度の概要

まずはドイツの教育制度の概要を図で確認しよう。

州ごとに異なる教育制度

ドイツは16の州からなる連邦共和国で、教育制度は州ごとに大きく異なる。
首都であるベルリンとベルリンを取り囲むブランデンブルグ州は、ドイツの標準的な教育システムとは異なり基礎学校が6年制となっている。
なお、ドイツでは初等教育から中等教育1までが義務教育とされている。

ドイツの労働局が運営するサイト「plant-beruf」。
このページ(ドイツ語)では州ごとの教育システムを図で確認することができる。

初等教育

ドイツの子供は6歳からの4年間(ベルリン・ブランデンブルグ州は6年間)初等教育として基礎学校に通う。

基礎学校 Grundschule

基礎学校は日本の教育制度でいうと小学校にあたる。
4年制(ベルリン・ブランデンブルグ州は6年制)である。
ドイツ語・算数・理科・宗教・英語・芸術・音楽・スポーツなどを習う。
基礎学校では、1日の授業は早めに終わり、児童は昼頃には家に帰って来る。

基礎学校での成績によっては、進める中等教育学校が制限される。

基礎学校の申込み

通常は自分の住むエリアの小学校に通うこととなる。
各州が用意しているウェブサイトにて、どの小学校に行くのか、いつまでに申込みが必要か、必要な書類などを確認しておこう。

新学期の始まる時期は州により異なるが、通常7月~9月の間になる。
例としてベルリンの場合、その年の9月30日までに6歳になる子供がその年の8月1日から基礎学校に入学する事となる。

学年の数え方

形式上は基礎学校を終えた生徒は中等教育の各学校に編入するという形を取る。
そのため、日本とは違い学年は初等教育からの通しで数える。例を挙げると、中等教育の1年目は5年生(5.Klasse)となる。

中等教育

ドイツの児童は基礎学校を卒業したら、基幹学校・実科学校・ギムナジウムのいずれかの学校に通うこととなる。この3つの学校は卒業までに掛かる年数、卒業時に与えられる学歴が違うのはもちろんだが、授業や出題される課題そのもののレベルも大きく異なる。

進学者の割合

下の図は、2016/2017年の中等教育の各学校の進学率の割合を示している。

連邦統計局調べ

10年前の調査結果と比較すると、ギムナジウムを選択する生徒が緩やかに伸びて、基幹学校を選択する生徒は大幅に減っている。

基幹学校 Hauptschule

学歴: Hauptschulabschluss, erweiterter Hauptschulabschluss

基幹学校は職業教育のための学校。授業は実務に即した内容となる。
基本的に5年制。1年間延長することで1ランク上の卒業資格erweiterter Hauptschulabschlussを得ることも可能。

近年基幹学校のイメージは、学級崩壊や移民の割合が極端に多いなどの理由から非常に悪くなっている。
基幹学校の生徒は卒業後すぐに修行研修先を探すこととなるが、イメージの悪化により受け入れてくれる会社を見つけるのが難しくなっている。

実科学校 Realschule

学歴: Realschulabschluss, Mittlerer Schulabschluss, Mittele Reife

実科学校は基幹学校と同様に職業教育のための学校。
ただし、優秀な成績を納めればギムナジウムに編入できる可能性を残している。
基幹学校よりも1年長い6年制である。
通常、実科学校を卒業した生徒は職業訓練(Berusausbildung)を始めるか、各種の職業学校へと進級する。

実科学校は州によっては、Sekundarschule・Mittelstufeschuleなどの名称で基幹学校と統合されている。

ギムナジウム Gymnasium

学歴: Abitur

大学進学を目指す生徒が通う教育機関。通常は8年制である。
ギムナジウムに通う生徒は、2つ以上の外国語を習得することとなる。
第一外国語は英語、第二外国語はフランス語・ラテン語・ロシア語・中国語のいずれかを選択する場合が多い。

卒業試験 Abitur

ギムナジウムを卒業して大学への入学資格(Abitur)を得るためには、卒業試験に合格しなければならない。卒業試験の合否はギムナジウムでの最後の2年間の成績と卒業試験によって決められる。 試験に合格すればドイツのほとんどの大学のほとんどの学部に入学することができる。

特定の分野の大学に進学する人のための専門大学入学資格(Fachabitur)もある。

学歴 Schulabschluss

ドイツにはおもに以下の4種類の学歴(Schulabschluss)がある。

  • 大学入学資格 Abitur
  • 専門大学入学資格 Fachhochschulreife
  • 実科学校終了 Realschulabschluss (Mittlerer Schulabschluss, Mittele Reifeともいう)
  • 基幹学校終了 Hauptschulabschluss

ドイツは学歴主義の強い国で、学歴や学校での成績によって選択できる職業が変わってくる。早い時期に求人の広告を読んでみて、自分の目指す職業にはどんな学歴とスキルが必要かを把握しておく必要がある。

また、学業の成績(Schulnoten)も選考の際に参考とされる。できるだけいい得点をもらえるように努め無ければならない。ちなみに、ドイツでは成績は1~6までの6段階で評価されて、1のほうが評価が高い。

大学と職業訓練

それぞれの中等教育を終えたものの多くが、大学に進学するか職業訓練(Berufsausbildung)を選択する。

ドイツの各種大学

ドイツの大学制度については他の記事にまとめるので、公開するまでお待ち下さい。

職業訓練 Berufsausbildung

ドイツの職業訓練(Berufsausbildung)については他の記事にまとめるので、公開するまでお待ち下さい。

その他の教育機関

ここまでは一般的なドイツの教育制度について書いてきたが、ドイツには他にも教育機関がある。

日本人学校

日本人学校は日本の文部省によって認定された公の教育施設で文部科学省から教員が派遣されている。日本の学校と同等の授業内容を日本語の授業で習う。
帰国後の編入がスムーズなので、駐在員としてドイツに居住する家庭の子供が通うことが多い。

ドイツには5つの日本人学校がありいずれもドイツの主要都市に位置している。
学校の規模や授業料などは学校によりかなり違いあるので、それぞれの学校のホームページで確認してほしい。

日本語補習授業校

日本語補習授業校は、ドイツの全日制の学校に通う児童が補習のために通う学校。平日の放課後に周数回授業が行われる。「日本語補習」という名称だが、日本の国語や算数を教える学校が多い。

ドイツには15の日本語補習授業校がある。

私立学校

ドイツには約3200の初等教育・中等教育のための私立学校があり、生徒全体の約9%が私立の学校に通っている。子供を私立の学校に通わせる親は年々増えている。

ドイツの私立学校の多くは以下に分類できる。

  • シュタイナー教育校 (Waldorfschule)
    オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した「教育芸術」を実践する学校。
  • モンテッソーリ教育校 (Montessorischule)
    イタリアの医学博士マリア・モンテッソーリによって考案された教育法。モンテッソーリ教育を実践する学校は「子供の家」と呼ばれる。
  • 教会が運営する学校 (Einrichtungen in kirchlicher Trägerschaft)

インターナショナルスクール

ドイツには大都市を中心にグローバルな教育をおこなうためのインターナショナルスクールがある。インターナショナルスクールでは英語を中心に授業が行われ、色々な国の生徒が集まる。

インターナショナルスクールでは、ドイツの修了資格であるアビトゥアではなく、世界共通のアカデミック資格「国際バカロレア(International Baccalaureate)」や英国での大学進学のために必要となる「A-Level(General Certificate of Education Advanced Level)」の取得を目的とする学校が多い。

ドイツのインターナショナルスクールについては以下のサイト(英語・ドイツ語)を参考にしてほしい。
https://www.internationale-schulen.de