スタートアップの聖地ベルリンの現在!ドイツ在住エンジニアが解説する。

「スタートアップの聖地」「欧州のシリコンバレー」などと呼ばれるようになって、かれこれ10年ほど経つドイツの首都ベルリン。
ロンドンと並ぶヨーロッパのテックハブとして世界各国のエンジニアの注目を集めている訳だが、日本ではその実態なかなか見えずらい。
この記事では、2008年よりベルリンに在住しこちらで職業訓練(スタートアップ2社でのインターンを含む)を卒業した著者が、その経験と照らし合わせながらリアルなベルリンのスタートアップシーンについて語っていきたいと思う。
Contents
ベルリンのスタートアップシーン

まずはベルリンのスタートアップシーンについてその特徴や変化について説明したい。
ベルリンのスタートアップの特徴
ドイツの首都ベルリンがスタートアップの聖地としてよく知られるようになったのは2010年頃からで、現在ではロンドンと並びヨーロッパ最大のビジネス集積地となっている。
ベルリンのスタートアップシーンの特徴を挙げると以下のようになるだろう。
- 数百億円という規模の資本提供
- 創業から数年で社員数千人規模の成長スピード
- インターナショナルで創業者の多くは外国人
スタートアップ企業の業種
数年前まで、スタートアップというとSNS・スマートフォンアプリ・クラウドサービスといったオンラインで完結するサービスを展開する企業が多かった。
そういった企業は今でもスタートアップの主流であるが、ここ数年でトレンドはだいぶ変わってきた。
コロナの影響もあり急成長してきたのがUber Eatsのような宅配サービスだ。最近ではベルリンの街に出ればフードデリバリーの自転車を見かけない日は無い。
外出規制によりオンラインで買い物をする人が増えたので、Eコマース企業もさらに成長している。
また最近は「フードテック」と呼ばれるバイオ食品を研究・開発するスタートアップ企業も目立つようになってきた。
注目のベルリンスタートアップ企業7社
では、次にベルリンに本拠地を置くスタートアップ企業の中でも特に存在感の放っている7社をピックアップして紹介したい。
紹介する企業にはすでに欧州全域、また世界中にサービスの規模を拡大している企業も幾つかある。
n26
n26は2013年創業のオンラインバンキング企業。
スマートフォンひとつで口座開設から送金まで伝統的な銀行では考えられない手軽さが売りで、金融業界の台風の目ともいえる存在。
創業者はオーストリア人のValentin StalfとMaximilian Tayenthal。
すでに欧州全体でサービスを展開しており、いまやベルリンのスタートアップを代表する企業となっている。
ウェブサイト:: n26

Rocket Internet
Rocket Internetはベルリンのインキュベーター(スタートアップ企業の資金調達、経営、国際展開などを総合的にサポートする組織 )。
ドイツでは有名なSamwer3兄弟が起こした企業で、ベルリンのスタートアップを語るうえで欠かせない存在。
Zalando・Home24・HelloFreshなど、ドイツを代表するようなオンライン企業を輩出してきた。
ウェブサイト:: Rocket Internet
Tier Mobility
TIER MOBILITYはEスクーターのスタートアップ。
現在ではTIERのロゴの入ったEスクーターはベルリンの街の至る所で見つけることができる。
創業者のLawrence Leuschner氏は中古メディアのオンラインショップとして有名なreBuyの元創業者。
ウェブサイト:: TIER

Hello Fresh
Hello Freshは食材宅配サービスを展開するスタートアップ企業。
レシピに基づき数食分の食材を温度調節された箱に詰め送ってくれる。
同じように食材配送サービスを展開するmarleyspoonもベルリン出身のスタートアップ企業。
ウェブサイト:: Hello Fresh

Delivery Hero
「Delivery Hero」は2011年に創業されたフードデリバリーサービスのスタートアップ。
事業買収によってアジア・中東など世界50カ国でサービスを展開している。
同じくデリバリサービスであり日本にも進出しているfoodPandもDelivery Heroの傘下の一企業。
ウェブサイト:: Delivery Hero
Gorillas
Gorillasはヨーロッパの大都市で急成長しているエクスプレス配達サービス。
スーパーの商品などを10分以内に自転車で配送してくれる。
2020年に創業されたばかりだがすでにヨーロッパのおもな都市はすべて網羅するほどに急成長している。
メディアで取り上げられることも多いが、労働条件の悪さなどで批判的な内容が目立つ。
ウェブサイト:: Gorillas
Trade Republic
Trade Republicは証券取引アプリのスタートアップ企業。
投資アプリ「Trade Republic」はドイツ・フランス・オーストリアで利用できる。
アプリならではの手軽さと一律1ユーロという手数料の安さが魅力だ。
アメリカで大成功を収めた「Robinhood」と同様に若いユーザが多い。
欧州委員会によるTrade Republicのビジネスモデルを法律で禁止しようという動きもある。
ウェブサイト:: Trade Republic
ベルリンのスタートアップの求人
この記事を読んでいる読者の中には就職先としてスタートアップ企業を検討している人も多いだろう。
ほとんどのスタートアップ企業はなんらかの形でエンジニア部門が存在し、このサイトの読者の現役プログラマにも就職を狙えるような企業もある。
スタートアップの求人サイト
スタートアップ企業の求人はStepStoneやindeedといった大手求人サイトにもあるが、スタートアップ企業に限定して探したい人にはスタートアップ専門の求人サイトも存在する。
AngelList(英語)
GS JOBBÖRSE(ドイツ語)
ドイツで仕事を探すうえでの注意点
ドイツで仕事を探すうえで気を付けてほしい点がいくつかあるので書いておく。
ドイツで就職するためには基本的には以下のいずれかを満たしている必要がある。
- 大学で専攻の学部を卒業している
- ドイツで職業訓練を卒業している
- 応募する職種の経験が3年以上ある
また、語学力の面でもコミュニケーションに十分な英語能力もしくはドイツ語力が必要となる。(CEFRでC1レベルが目安)
一言にスタートアップといえども様々な規模の企業が存在する。
スタートアップというと聞こえはいいが、スタートアップ企業の大半は数年のうちに倒産するという厳しい現実も頭の片隅において仕事探しをしてほしい。